2005年6月1日号
社会保障の給付適正化への検討課題提示
〜政府「社会保障の在り方に関する懇談会」
報告書案に「薬薬連携の強化」盛り込む
〜厚生労働省「医療安全対策検討ワーキンググループ」
薬剤師の信頼度が医師を上回る3位に
〜日本リテイル研究所「職業信頼度調査」
高齢者医療制度について経済界が独自案公表
〜社会保障審議会「医療保険部会」
政府の「社会保障の在り方に関する懇談会」は5月17日、これまでの議論を踏まえた論点整理をまとめた。社会保障給付費の伸びの抑制・効率化を進めるが、高齢者関係給付の比重が高く、児童・家庭関係給付の比重が非常に低い現状を見直す。
17日の懇談会で了承された検討課題は、経済・財政、介護保険、中医協の在り方、医療制度改革など。医療制度改革については、「厳しい現状にあるという認識の下、経済・財政とのバランスのとれた、持続可能な制度を構築するため、皆保険制度の維持を前提に、様々な給付適正化対策に総合的に取り組む」必要性があると明記した。
厚生労働省の医療安全対策検討ワーキンググループは5月19日、(1)医療の質と安全性の向上、(2)医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発防止対策の徹底、(3)患者、国民との情報共有と患者、国民の参加促進――を3本柱とする報告書案をまとめた。報告書案は、項目ごとに将来像のイメージと当面取り組むべき課題を示している。
その中で、医薬品の安全確保に関して、安全使用のための責任体制の整備や業務手順書の整備などとともに、入院時の患者持参薬および退院時の処方薬の情報を、医療機関の薬剤部等と地域の保険薬局との間で共有するための連携強化(薬薬連携)を図ることが明記された。
日本リテイル研究所が高校生以上の男女1026人に行った職業信頼度調査で、消防士、裁判官に次いで薬剤師が3位と、高い信頼を得ていることがわかった。医師は7位、看護師は5位だった。
信頼度の選択基準は、イメージや身近で働いている人を参考にした人が多く、30代くらいまではイメージによる選択が多く、40代はイメージと身近で働いている人を参考に選択した人がほぼ同数だった。薬剤師をはじめとする医療関係者の信頼度が高かったのは、医療のイメージに加え、医療機関にかかることの多い50代、60代が、身近で働いている人を選択基準にする人が多いるためで、同研究所は「喜ばしい事実と分析できる」としている。
厚生労働省の「社会保障審議会医療部会」は5月25日、新たな高齢者医療制度の創設の議論をスタートさせた。
政府は、75歳以上の後期高齢者が加入する新たな高齢者医療制度の創設を2003年3月に閣議決定しているが、それに対し健康保険組合連合会(健保連)や日本経済団体連合会(経団連)は独自案を公表。政府案では若年者と同じ保険に組み込まれる前期高齢者(65〜74歳)分の給付費負担(労使負担)が重いことから、独自案では対象年齢を年金や介護保険の給付年齢と同じ65歳以上とした。
また、自己負担について、政府案は1割(高所得者は2割)、健保連案は2割(高所得者は3割)、経団連案は入院2割、外来3割としている。
これらの案に対し、高齢者医療の給付の圧縮に反対する日本医師会は独自案をまとめており、6月上旬に公表する意向を明らかにした。