2010年4月15日号
薬剤師国試、合格率は56・35%と大幅ダウン
厚生労働省 薬剤師国家試験の合格発表
「薬剤師による剤形選択」など業務拡大の考え示す
厚生労働省チーム医療の推進に関する検討会
薬局でのヒヤリ・ハットで多いのは「薬剤の数量間違い」
日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」
向精神薬の適正管理が偽造処方せん防止に有効
日薬「薬剤師会・薬局のための偽造処方せん対策マニュアル」
厚生労働省は3月30日、薬剤師国家試験の合格者を発表した。受験者は6720人、合格率は56.35%と、例年に比べて受験者数、合格率ともに大幅ダウンとなった。
今回の受験者数は前回試験よりも8469人少ない6720人で、合格率は前回よりも18.05%低い56.35%。受験者のうち、「新卒」は1318人(前年比9415人減:全体の19.61%)、再受験者などは5402人(同946増:80.39%)だった。
今回は、従来の4年制薬学教育から6年制薬学教育への移行期にあり、受験者に新卒が少なかったと考えられる。この傾向は来年も続くとみられる。
厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」は、このほど、薬剤師業務の将来的な範囲拡大を求める考えを示す報告書をまとめた。
報告書では、薬剤師が主体的に薬物療法に参加することは「医療安全を確保する観点から非常に有益である」としつつも、病棟では医師や看護師が注射剤の調製や副作用チェックを行うなどの場面が見られることを指摘。まずは現行制度の下、薬剤師が実施できることについて「薬剤師の活用を促すべき」とした。
現行でも可能な業務例として、プロトコールに基づく薬剤変更、積極的な処方提案、薬物血中濃度や副作用モニタリングなどに基づく薬剤変更提などを明記した。
さらに、6年制教育を受けた薬剤師が輩出されることを念頭に、将来的には(1)薬剤師の責任による剤形選択や一包化、(2)リフィル処方せん、(3)一定条件下での処方せんによる指示内容を変更した調剤――などの業務の導入を検討するよう提示した。
そのほか報告書は、看護職の上位資格である「特定看護師(仮称)」の創設を提言。特定看護師は、これまでは「診療の補助」に含まれないと理解されてきた「特定の医行為」を実施できるとした。
特定の医行為の例としては、患者の状態に応じた薬剤の選択・使用を挙げており、「疼痛、発熱、脱水、便通異常、不眠等への対症療法」と「副作用出現時や症状改善時の薬剤変更・中止」のほか、一部の検査や処置を挙げた。特定看護師の要件は、修士課程の修了や第三者機関による認定など。医療安全の観点から法制化を視野に入れている。
日本医療機能評価機構は、「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の第2回報告書を公表した。2009年4月にスタートした同事業の報告書で、2009年7月から12月までに、全国の1774軒の薬局から同機構に報告された、1285件のヒヤリ・ハット事例を集めて集計している。
同報告書によると、ヒヤリ・ハット事例をタイプ別にみて1番多かったのは「薬剤の数量間違い(544件)」。次いで「規格・剤形間違い(179件)」「薬剤取り違え(164件)」「調剤忘れ(93件)」だった。
また、発生要因は「確認を怠った」が圧倒的に多く1179件。「勤務状況が繁忙だった」の165件、「技術・手技が未熟だった」の84件が続いた。
また、報告書は、「共有すべき事例」として、報告のあった中から、特に広く医療安全対策に有用であると考えられる事例を掲載。そこには、報告者による事例の背景・要因や改善策のほか、同機構による「事例のポイント」を追記している。例えば、ユリノームと間違えてユリーフを調剤してしまったケースでは、「両剤ともに劇薬であり、配置の工夫や類似名称に対する警告表示などが望まれる」など、薬局での注意点などを示すコメントを記載している。
日本薬剤師会は、偽造処方せんの疑いが強い処方せんを受け取った場合の対応などを示した「薬剤師会・薬局のための偽造処方せん対策マニュアル」を公表した。
同マニュアルによると、偽造処方せんによる不法入手が多い薬剤は「リタリン」や「ハルシオン」など。また、薬局における偽造処方せん防止対策としては、(1)啓発ポスター等による注意喚起、(2)偽造処方せんが持ち込まれた際の対応手順等をスタッフ全員が把握、(3)向精神薬の適正な保管および出入庫管理――などを挙げた。
なお、薬局での対策・対応をまとめたダイジェスト版である「薬局における偽造処方せん対策マニュアル」も同時に公表。薬剤公布後に偽造処方せんであることが判明した場合の対処法や、処方せん受付時にチェックすべきポイントなども示している。