泉 憲政 氏
1974年徳島県生まれ。99年に徳島文理大学薬学部大学院を卒業し、同年テイオーファーマシー株式会社に入社。現在は、広島県の同社ジオ薬局神辺店に勤務。秋の日本薬剤師会学術大会に向けて、データを収集する毎日を過ごしている。
毎年自らテーマを設定し、学会発表
徳島県出身、現在は広島県で保険調剤薬局に勤務する泉氏。入社2年目の昨年から、学会発表活動に力を入れ始めた。
昨年3月、札幌市で行われた第121回日本薬学会では「調剤薬局における抗がん剤投与患者の告知の現状と対応」をテーマに成果を発表した。また昨年秋に 横浜で開催された第34回日本薬剤師会学術大会では、薬局内の危機管理システムと安全対策の推進をテーマに、調剤インシデントの分析結果を発表。さらにそ の発表を元に、今年3月末に千葉で行われ122回日本薬学会では、業務改善を行った結果など具体性を持たせた内容を発表した。いずれの発表も泉氏が中心と なって、テーマを設定し、社内の他の薬局にも声をかけてデータを集め、業務改善を行い、結果をまとめたものだ。
「抗がん剤服用患者への告知状況」に関する発表は、当時、泉氏が勤務していた薬局で、年間90人を超えるがん患者の処方せんを応需していたことがきっか けだった。薬局では患者への告知の有無はわからない。「これは抗がん剤ですよね」という患者からの問いに、返答に詰ることもしばしば。「せめて患者さんが 自分の病気をどのように捕らえているかがわかれば、よりよい服薬指導や情報提供ができるのではないか」。そう考えた泉氏らは、さっそく処方医と連絡をと り、患者への告知の有無を伝えてもらい、その情報を元に処方医や患者へのより具体的な情報提供を可能にした。
「薬局内のインシデント分析」をテーマにした際には、薬剤師別に原因を調査し、各人が注意すべき明確な目標を立てることによって、5.1%の過誤率を2.4%までに下げることに成功した。
学会発表は「業務の中で不安に思ったことを何とかしたいと思った結果」だと泉氏は強調する。学会発表をすることで、外部の人の様々な意見が聞くことができ「薬局の中だけでは知りえない情報や知識を得ることができ、それを実務に生かせる」ことも大きなメリットだ。
さらに学会発表を行うことは、業界全体のレベルアップにもつながるのではないかと、泉氏は考えている。「僕が苦労して調べたことを、他の人がまた同じ苦労 をして調べる必要はないと思う。それを参考にして、次の新しいことをやっていくことで、全体が高まっていくのではないか」。そのために自分が出した成果を 公にすることが大切だと考えているという
テーマを設定し、追求していくのが面白い
興味を持った こと、気になったことは追求しなければ気が済まない泉氏。子供の頃から何にでも興味を持ち、好奇心いっぱいのパワフルな性格だったのではないかと想像した が「決してそうではなかった」と本人は語る。薬学部に入ったのは「ただなんとなく」と言うし、3年次に研究室を選ぶ際も「就職に有利そうな先生だったの で」と、まるでやる気のない学生だったことを白状する。
そんな"ぐーたら学生"が、"積極的に行動する学生"に変化したのは、研究室に入って「何かテーマを決めて、仮説を立てて実験をすることの楽しみを知って しまった」からだそうだ。専門は有機化学。学部生の頃の、教授や院生の指導の元、言われたとおり実験を繰り返すばかりだった状況に不満を覚え、「自分で計 画して実験を進めたくて、つい大学院へ進学してしまった」という程ののめり込みよう。学生時代はろくに自宅に戻らず研究室に寝泊りし、実験に明け暮れる日 々を送った。
修士課程を修了し、香川県に本社のある保険薬局へ就職。当初は「まったく初めての世界にとまどった」が、やがて薬局の仕事も「実験と同じように、自分の疑問を解決していく面白さがある」と感じるようになり、今度は薬局業務にのめり込んでいった。
今は、「どうすれば患者さんがきちんと薬を飲めるか」、そのことを様々な方面から考えていきたいと考えている泉氏。「テーマは薬局の中にたくさんある。一つひとつを追求し、その成果を公の場で発表していきたい」と抱負を語っている。
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